ちょっといい話03「バージンロード」

これはちょっと頑固な親子のお話です。

国内でのリゾート婚に憧れるプレ花嫁のYさん。お忙しい新郎に変わり、お母様と打合せに良く来られていました。この日は3回目にして新郎と新婦そしてお母様3人で打合せ。それも新婦のお父様の件で。


前々からお伺いしていたのですが、新婦とお父様の仲が悪く、前回の打合せでも「バージンロードは一人で歩く!お父さんとは歩きたくない」と言い張り、お父様も娘と歩くのを拒否。お母様も困ってた様子。それを聞いた新郎が居ても立ってもいられなく相談に来られたのです。

「いくらなんでも、バージンロードを一人で歩くって・・・お父さんに俺からもお願いするから」「お願いされても嫌なものは嫌なの!・・・向こうも嫌でしょ。」といった新郎と新婦のやり取りで、他の話も進まないままこの日の打合せが終わってしまいました。

それから数時間後、私のもとに新郎が謝りにこられました。


「すいません、いろいろとご迷惑おかけして。実は・・・・・」

新婦とお父様の事を少し詳しく話してくれました。もともとは、仲のいい父娘だったそうで、新婦もお父さん子でどこに行くときも着いていっていたそうです。昔からの同級生の新郎も仲のいい親子だなぁと微笑ましかったほどに。それが中学2年生あたりから反抗期もあったそうですが、お父様が仕事でなかなかコミュニケーションが取れない期間が続いたそうです。お父様も新婦も悪いわけではないのですが、それから今まで話すどころか返事すらしなくなってしまったそうです。


なんとか、この機会に二人には仲良くしてほしい。そんな新郎の願いを聞いて、次回の打合せで新婦とお母様にバージンロードの意味をお話ししました。

ご新婦様が歩くバージンロードは今までの人生の道のりを表してること。ウエディングステップの一歩には、約一年という意味があること。お父様やお母様、いろんな人に支えられて今まで歩いてこられたこと。

少し偉そうに言ってしまいました。(^_^; 新婦も下を向いたまま黙ってしまい、この日の打合せは終了。


そして、お母様にお願いしてお父様にもこの話をしに、お家におじゃましました。

お父様も無言のまま、私が話す言葉だけを聞いて、一言「ありがとうございます。」と会釈され、部屋に戻っていかれました。今思えば、少しお節介だったかもしれません。


そして、新郎もお母様も不安に包まれた結婚式。

やはり、一人で扉の奥で立っている新婦。当日、何度もお願いしたのですがやはり聞いていただけてない様子でした。時間になり、バージンロードへの扉が開く瞬間、突然「お父さん!!」と呼ぶ声が・・・。新婦の声でした。


その声を聞いたお父様の肩は震えていました。私はすぐさま、お父様のそばに駆けより新婦のいる場所へ誘導しました。その時のお母様の安心した「いってらっしゃ」が今でも忘れられません。

それから父娘はついにバージンロードを歩み始めます。小さい声で聞き取れませんでしたが、二人は何かを話しながら一歩、一歩、歩み続けます。それはゆっくりと、ゆっくりと、新郎のもとへ。


「○○くん、気が強く頑固な娘ですが、これからは私たちに代わって宜しくお願いします。そして、ありがとう」


そう、新郎に伝えれて新婦の手を渡されていました。事情を知っていた会場のみなさんも、その光景を見て目頭がウルウルと。私もウルウル。

その後の式、披露宴は父娘とも安心したのか終始笑顔で、最後にお父様が私のところにやってこられて「いい話をありがとう」とお礼を言われました。いえいえ、こちらこそいい結婚式を手伝わせていただきありがとうございます。


そうそう、その時バージンロードで何を話したのか聞いたら、一歩踏み出しては1歳の時の話、一歩踏み出しては2歳の時の話をしながら歩いたそうです。私がお家に話しに伺った後、アルバムを見返し、いろいろと思い出したそうです。ちょっと頑固で不器用な親子のお話でした(*^_^*)

プランナーの本当にあった結婚式の怖い&面白い話

幸せなお二人を間近で感じられるウェディングプランナーをはじめて早数年。 私が体験したリアルな出来事を少しづつ紹介していきます。 ドキドキする怖い話や心に残るいい話、鉄板の面白い話など、結婚をお考えのお二人の参考にしてください。