ちょっといい話06「娘の願い」

これは若いカップルからのご相談でした。大学を卒業されて間もないお二人は、まだまだ結婚はと思っていたそうです。お互い就職もでき、社会人一年生を頑張っていた矢先、新婦のお父様が癌と言うことが発覚したそうです。それも1年もつかわからなく、家族にだけ伝えられ、お父様は知らされてなかったそうです。


将来的に結婚を視野にいれていたお二人は、なんとかお父様が生きている内に花嫁姿を見せ、バージンロードを歩き、赤ちゃんを抱っこしてほしいとの願いからご相談にこられました。父の好きな大自然の中で結婚式をしたい・・・そんな新婦の願いからガーデンウェディングをオススメし、お二人ともとても気に入っていただきました。


しかし、実はお父様から結婚の許しを得られていなかったのです。

お二人がまだ若いというのもあったそうですが、それよりも赤ちゃんができたことを伝えると罵倒され殴られたそうです。癌とは知らないお父様に生きているうちに孫と花嫁姿を見せたかったと伝える事も出来ず、何度も何度も二人で許しを頂くためにお願いしたそうです。

そんな時、私のところにこられて父も喜んでくれる結婚式はないかと相談されました。事情を聞いた私は、お二人の話やお父様のことを聞き、なんとか手伝いたいという気持ちになりました。


しかし、その頃にはお父様も病状がすすみ痩せておられ、ご家族みなさんが心配でしかたがなかったそうですがちょうど同じ頃、新婦が元気な赤ちゃんを授かり、赤ちゃんを見たお父様の口から結婚を許すといってくれたそうです。

直ぐさま、新郎から電話でその話を聞いた私は一番早い日取りを探し、新婦や赤ちゃんもいるのですぐにとはいきませんが、できるだけお父様が無理のない時期をお二人に提案しました。


そして親子揃っての打合せ。

車椅子のお父様がガーデンを見学している時のお二人の笑顔。

結婚式が近づくにつれ、痩せていくお父様。

なんとか結婚式まで間に合ってくれと、願うことはみんな一緒でした。


当日、式では車椅子を使わず、チャペルのバージンロードを花嫁と一緒に歩くお父様。

新郎にバトンタッチするとき、少しよろめかれましたが、新郎新婦お二人がすかさず、お父様の側に。

「○○くん、これから娘と孫をたのんだよ」

病気のことを知っていた私は、その光景を見て感動と複雑な気持ちで涙がとまりません。


結婚式もガーデンパーティも無事に進行し、お父様も終始笑顔で式を楽しんでおられました。帰りには私のところへお母様とこられて、「プランナーさん、娘夫婦のためにありがとう。いろいろと大変だったでしょう」そう言われ、深々と頭を下げられました。

そんなお父様を見て、なんとか涙を流さず我慢しました。


その後、お父さんは新郎新婦そしてお孫さんと一緒に暮らし、結婚式からおよそ3週間後になくなられたそうです。

亡くなられてから数日後、お母様と新郎新婦が私のところに挨拶がてら来られ、お父様のことをお聞きしたのですが、お葬式の後お父さんが書かれた日記帳が見つかったそうです。そこには死ぬことを覚悟していた事や花嫁姿を見れた事、孫を抱っこ出来た事などなど、お母様やお二人に対してのお礼や早く結婚を許してやればよかったとに後悔が書かれていたそうです。

すると新婦がここ読んでみてくださいといわれ、目を通すとそこには私に対してのお父様からお礼の言葉が書かれていました。私はその場に泣き崩れてしまいました。

「プランナーさん、本当にありがとう」

この言葉は私にとって宝物です。

プランナーの本当にあった結婚式の怖い&面白い話

幸せなお二人を間近で感じられるウェディングプランナーをはじめて早数年。 私が体験したリアルな出来事を少しづつ紹介していきます。 ドキドキする怖い話や心に残るいい話、鉄板の面白い話など、結婚をお考えのお二人の参考にしてください。